今日のルノルマン・カード こちら

アンデルセン雪の女王

アンデルセンは自伝で、私の生涯は波瀾に富んだ幸福な一生であった。それはさながら一遍の美しい物語―メルヘン―である。そして、幼年時代の家庭の描写について、私の童話〖雪の女王〗のなかに今もなお咲き匂っていると綴っています。

雪の女王 ―七つのお話しからできている物語―

雪の女王は、デンマークの童話作家・詩人であるハンス・クリスチャン・アンデルセンが1844年に発表した童話です。アンデルセンの童話は、「人魚姫」「みにくいアヒルの子」「マッチ売りの少女」など世界中で親しまれ読み継がれています。おとぎ話ルノルマンの【33 鍵】のカードには雪の女王の一場面が描かれています。知っているようで知らなかった雪の女王の七つのお話からできている物語のあらすじをまとめてみました。童話としては、とても長いお話です。

不可能なプロジェクトに焦点を当てても無駄です

お話 その一 鏡とそのかけらのこと

あるところに一人の悪い小びとがいました。仲間の中でも一番悪い魔もの、つまり悪魔でした。ある日のこと、悪魔は一つの鏡を作りご機嫌でした。その鏡というのは、よいものや美しいものが映ると、小さくなってほとんど何も見えなくなり、役に立たないものや醜いものは、はっきりと映ってより一層酷くなるものでした。この鏡に映すと、どんなに良い人間でも醜く映り、人間の心の中によい考えや信心深い考えが浮かぶと しかめっ面があらわれてきます。小びとの悪魔は自分の素晴らしいい発明に笑わずにはいられませんでした。国中の人間を映したあと、今度は天使や主をからかってやろうと高く高く上っていきました。高く上っていけば行くほど 鏡の中のしかめっ面は酷くなり、神様や天使の近くまで来たところで鏡はおそろしく震えだしました。とうとう悪魔の手から離れて 細かいかけらに砕けて地上に落ちてしまったのです。こうして今までよりももっと大きな不幸を世の中にまき散らすことになりました。ほんの小さなかけらの一つ一つにも、元の鏡と同じ力があったのです。砂粒ほどのかけらが人間の目の中に入ると、その人は物事をあべこべに見たり、物事の悪いところばかりに目をつけたりするのです。恐ろしいのは心臓に入ってしまった人です。その人の心臓は氷のようになってしまいます。眼鏡になったかけらもありました。こんな眼鏡をかけてものを正しく見たり公平にしようとすると、ひどくまずいことになるのでした。これを見て悪魔はお腹の皮が破けそうになるほど笑い転げました。それでもまだ家の外には 小さいガラスのかけらが空中を飛んでいました。

お話 その二 男の子と女の子

たくさんの家が立て込んでいて大勢の人が住んでいる町がありました。そこでは みんながみんな自分の庭を持つだけの場所がありません。たいていの人は植木鉢に花を植えて楽しんでいました。そのような町に二人の子供が住んでいました。この二人は兄妹ではありませんが、隣り合った家に住み、本当の兄妹のように仲良しでした。男の子の名前はカイ、女の子の名前はゲルダです。どちらの両親も、窓の外に大きな木の箱を置いて、野菜とバラの木を植えていました。夏には、このバラの花はたとえようもなく美しく咲きそろいました。二人は、神様の明るいお日様を仰いで、バラの花にキスをしました。そんな楽しい夏の日、教会の大きな塔で時計がちょうど5時を打ちました。その時、カイが言いました。「胸のところがチクリとしたよ。今度は目の中に何か入った。」それは、あの悪魔の鏡から飛び散ったガラスのかけらの一つだったのです。この鏡は、いいものが醜く映り、悪いものがはっきりと見え、あらばかりが目に付くようになるのです。間もなくカイの心臓は氷の塊のようになってしまうでしょう。カイは「汚らしいバラばかりだ!」と言って箱を蹴り飛ばし、バラの花をむしり取ってしまいました。カイは、近所中の人たちの癖やよくないところを何でも真似てからかうようになったのです。ある冬の日、そりを肩に担いで町の広場に出て遊んでいました。そこへ一台の大きなそりがやってきました。その真っ白なそりには白い毛皮にくるまって、白い帽子を被った人がすわっていました。カイは素早く自分の小さなそりを結びつけると一緒に滑り出しました。そりはどんどん早くなって飛ぶように走り続けました。大きなそりを走らせていた人の毛皮も帽子も雪でできていて、輝くばかりに白い女の人でした。この人こそ雪の女王だったのです。雪の女王はそれは美しい人で、これ以上賢くて優しい顔は考えられません。雪の女王はカイを連れて、黒い雲の上を高く高くどこまでも飛んでいきました。

お話 その三 魔法を使うおばあさんの花園

さて、カイがいなくなってから小さなゲルダはどうしたのでしょうか?カイがどこへ行ったのか知っている人は誰もいませんでした。町の広場で遊んでいた男の子たちの話では、カイが自分の小さなそりを、大きな立派なそりに結び付けて そのまま町の門から出ていくのを見たというだけです。人々は、町のすぐそばを流れている川に落ちてしまったんだと言いました。長く暗い冬の日が続き、とうとう暖かいお日様の輝く春になりました。ある朝、ゲルダは川に行ってカイのことを尋ねてみようと 町を出ました。芦の中に浮かんでいるボートに乗って、流れのままに川を下っていきました。「もしかしたら、この川がカイのところへ連れて行ってくれるかもしれないわ」そう思うと気分も晴れ晴れとして、美しい緑の岸を眺めていました。すると、赤と青に塗った奇妙な窓のある小さな家が一軒立っています。川の流れがボートを岸に近づけてくれたので すぐそばまできました。すると家の中から、きれいな花の絵を描いた大きな日よけ帽子を被った おばあさんが出てきました。ゲルダは、見たこともないおばあさんを少し気味悪く感じましたが、これまでの何もかもを話しました。おばあさんは、可愛いゲルダを手元に置きたいと思い、魔法を使って仲良しのカイのことを忘れさせていきました。そして、庭の美しいバラを黒い土の中に沈めてしまいました。もし、ゲルダがバラの花を見てカイのことを思い出したら、ここから逃げ出すのではと心配になったからです。花園には、どんな絵本よりも美しく四季とりどりの花が咲き乱れていました。ゲルダは、いく日もいく日も暖かいお日様の光を浴びて花と一緒に遊びました。けれども、何か一つ足りないような気がしてなりません。ある日のこと、ゲルダは、おばあさんの日よけ帽子の描かれているバラの花を見て、この花園にバラの花が足りないことに気づきました。おばあさんは、庭のバラの花は残らず土の中に隠しましたが、帽子に描いてあるバラの花を消すのを忘れていたのです。家のバラの花と小さいカイのことを思い出したゲルダは走って庭から出ていきました。ふと辺りを見まわすと、いつの間にか夏はとうに過ぎて秋が深まっていました。「まあ大変!ずいぶん道草を食ってしまったわ!」ゲルダは歩き出しました。

お話 その四 王子と王女

疲れ果てたゲルダが腰をおろして休んでいると、ちょうど向こうの雪の上を、一羽の大きなカラスがぴょんぴょんと飛んでいました。カラスは立ち止まってゲルダの顔を長い間見ていました。ゲルダのことを好きになったカラスは、「こんな広い世の中をたったひとりぼっちでどこに行くの?」と尋ねました。ゲルダは、これまでの身の上をすっかり話して聞かせ、カイを見かけませんでしたか?と尋ねました。カラスは、王女様のところにいるのがカイではないかと答えました。この国のとても利口な王女様は、国じゅうの立派な青年をお城に招き、一番上手にお話ができた人をお婿さんに選ぶことにしました。三日目にお城にやってきた一人の少年がいました。すらすらと上手にお話をする可愛らしい少年のことを王女様は気に入り、少年も王女様が気に入りました。「きっとその人がカイだわ!私をお城に連れて行ってちょうだい」とカラスに頼みました。カラスには、お城で飼われている許嫁がいるので、お城のことは何でも知っているのです。カラスの案内でカイが寝ているはずの寝室まで行き顔を確認すると、それはカイではありませんでした。ゲルダは泣きながら王子と王女に今までの身の上話をしました。可哀想に思った王子と王女は、ゲルダの願い通りに 小さな馬車と一頭の馬、一足の長靴を用意して、カイを捜す旅の支度をしてくれました。いよいよ出発の時、門の前には何から何まで金でできている新しい馬車がきました。それには王子と王女の紋章が星のように輝き、御者と従者と先乗りまでもがひかえていました。王子と王女はゲルダの幸運を祈ってくださり、カラスは馬車が見えなくなるまで見送ってくれました。ゲルダを乗せた馬車は、明るいお日様のようにいつまでも輝いていました。

お話 その五 山賊の小娘

ゲルダの乗っている馬車は、暗い森の中を通りました。馬車は、たいまつのように光り輝き、山賊どもの目を射りました。「金だ!金だぞ!」と叫び、ゲルダを馬車から引きずりおろしました。年取った山賊のばあさんは、「太らせた子羊みたいだ」といって短刀を引き抜きましたが、山賊の小娘がばあさんの耳に噛みつきました。そのために、ばあさんはゲルダを殺すきっかけがなくなりました。「この子は私と遊ぶんだよ!」と山賊の小娘は言い、ゲルダを馬車に乗せて森の奥深くに入っていきました。やがて山賊の城の中庭に着きました。ゲルダは、今までのことをすっかり話し、自分がどれほどカイのことを思っているかということも話しました。大広間の横木や止まり木には百羽ほどのハトがとまっています。それから、小娘の古い友達のトナカイもいます。ハトは、「僕たちはカイをみたよ!雪の女王の車に乗っていたよ!」と、年中雪に閉ざされているラブランドというところにいると言いました。山賊の小娘はトナカイに、ゲルダをラブランドの雪の女王のお城まで連れていくように言いつけました。山賊の小娘は、ゲルダをトナカイの背中に乗せてやり、体をしっかりしばって布団をあてがいました。そして、パンとハムをトナカイの背中に結びました。「さあ走れ!だけど背中の女の子には気をつけるんだよ!」トナカイは夜となく昼となく一生懸命走り続け、パンもハムも食べてなくなってしまったときにラブランドに着きました。

お話 その六 ラップ人の女とフィン人の女

ゲルダを乗せたトナカイは、とある小さな家の前でとまりました。屋根は地面までとどいていて、入り口はたいへん低く、腹ばいにならなければなりません。家の中には、ラップ人の女が一人いるだけです。トナカイは、おばあさんに自分のこととゲルダのことを話しました。ゲルダは、寒さのためにひどく疲れていて、口もろくに聞けませんでした。ラップ人の女は「それは可哀想に。でも、お前さんたちは、ここから百マイル以上も北のフィンマルケンまで行かなけりゃだめだよ。雪の女王は今、そこにいるよ。」と、もっと詳しいことを知っているフィン人の女に手紙を書いてくれました。それからゲルダは、再びトナカイに乗って出発しました。とうとうフィンマルケンにやってきて、フィン人の女の家にやってきました。女は手紙を読み、トナカイは自分のこととゲルダのことを話しました。「カイって子はね、たしかに雪の女王のところにいるよ。でも、ガラスのかけらが心臓に突き刺さっていて、小さいガラスの粒が目の中に入っているから、こんないいところはないと思っているんだよ。それを取り除かないと本当の人間には戻れないし、いつまでも雪の女王の言いなりになっていなければならないんだよ。」と言いました。トナカイは、雪の女王に打ち勝つものをゲルダにあげてほしいと頼みました。女は「あの子の優しい罪のない心が力なのだよ。力はあの子自身の心の中にあるものなんだよ。」と、ここから二マイル先の雪の女王の庭のはずれにゲルダを運んで 急いで戻ってくるように言いました。トナカイはゲルダを背中に乗せて力の限り走りました。庭のはずれに着くと、ゲルダは一人で雪の女王のお城へ向かっていきました。さて、カイはその後どうしているでしょうか?確かに今ではゲルダのことなど少しも考えてはいませんでした。ましてや、今ゲルダが、お城の外まで来ていようとは、夢にも思っていませんでした。

お話 その七 雪の女王のお城であったこと、その後のお話

お城の壁は降りしきる雪でできていました。また、窓や戸は身を切るような風でできていました。お城には百以上の広間があり、一番大きな広間は何マイルも広がっていました。どの広間も、強いオーロラの光に照らされて、見渡す限り果てしなく虚しく一面の氷が寒々と光っていました。ここには喜びというものがありません。さて、小さなカイは寒さのために真っ青というよりは、どす黒くなっていました。でも、自分ではそれに気づきません。なぜなら、雪の女王がキスをして、カイから寒さの感じを奪ってしまったからです。おまけに、カイの心臓は、まるで氷の塊のようだったのです。みしみしというほど固く凍り付いて、もし人が見たら、カイは凍え死んでいると思うことでしょう。ゲルダは大きな門をくぐってお城の中に入り、寒い寒い広間でカイの姿を見つけました。ゲルダはカイにとびついて、しっかりと抱きしめて叫びました「カイ!懐かしいカイ!とうとうあなたを見つけたわ!」冷たくなって座っているカイの胸の上に、ゲルダの熱い涙が落ちて心臓の中にしみこんでいきました。そして、氷の塊を溶かして小さな鏡のかけらを食い尽くしてしまいました。ゲルダが讃美歌を歌うと、カイは泣き出しました。泣いた拍子に鏡の小さなかけらが目の中から転がり落ちました。カイは、ゲルダに気がついて喜びの声をあげました。二人は手を取り合ってこの大きなお城を出ました。ゲルダとカイは、こもごも今までのことを話しました。手を取り合って行くにつれて、あたりは花と緑に包まれた美しい春になりました。やがて、教会の鐘が響いて見覚えのある高い塔と大きな町が見えてきました。それこそ二人が住んでいた町だったのです。家の中は何から何までもとのままでした。けれども、二人はいつの間にか自分たちが大人になっていること気がつきました。バラの花は、開け放した窓の外に美しく咲いています。そして、そこには小さな子供の腰掛けがおいてありました。カイとゲルダはめいめいの腰かけに座って、お互いの手を握りました。子供の心を持った二人の大人がそこに腰かけていました。おりしも時は夏、暖かい恵み豊かな夏でした。

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